最近読んだ本(90)――久間十義『ダブルフェイス』

 何年か前、西島秀俊、香川照之出演のテレビ映画『ダブルフェイス』という非常に面白い作品を見たことがあります。今回読んだ本は、その作品とタイトルが同じ、もちろん原作などではないと最初から解っていましたが、同じように非常に面白いものだろうと期待して買ってみました。しかし、残念ながら完全に期待は裏切られました。

 この「最近読んだ本」シリーズも90回になりました。多くは良かったと感想を述べていますが、ごくたまに残念な作品も取り上げています。もっともそれは私個人の印象であり、私の興味を惹かないものでも、人によっては好印象ということもあるでしょう。それは、ジャイアンツが嫌いな人もいれば、好きな人もいるというようなものですね。(^o^)
この小説は、東京渋谷で女性の扼殺死体が発見され、その事件を担当した刑事たちの活躍が中心の、言わば警察小説と分類されるものです。副題に「渋谷署8階 特捜本部」と付いています。

 私は面白いと感じる作品を読んでいると、どんどん物語に入り込んでしまうのですが、今作はそこまで入り込めませんでした。警視庁の根本恭平という若手刑事が登場します。最初はこの根本刑事を中心に展開するので、彼が主人公なのだろうと思いきや、ずっと中心に居る訳でもなく、他の古株刑事たちの捜査が入り込んだり、また根本刑事の恋人が変質者に絡まれる事件が起きたりと話があちらこちらに飛ぶし、登場人物も同等の扱いだし、主人公がボケてしまっていると感じたところが作中に感情移入できなかった点でしょうか。

 複数の話が同時進行で展開していくというのは、この類いの小説では常套手段のようなところもあり、それが徐々に繋がってきて、「ああそうだったのか」と読者に思わせるということになるものです。それが、この作品は繋がりそうで微妙に繋がらないのです。ヒットは出てランナーはたまるけれど得点できない。打線が繋がらないというどこかのチームの野球を見せられているようなものでした。

 以下ネタバレになりますので恐縮ですが、政財界を巻き込むような展開になりそうなのに尻切れトンボの感じだったし、根本刑事の恋人の事件は結局、最初の事件と関係がなかったしね。ただ恋人の勤める会社の先輩女性は最初の事件の重要人物と関わってはいましたが。

 本は、上下2巻に別れています。特に上巻は、ただただ時が流れている印象しかなく、つまらぬ本を買ってしまったと後悔もしました。下巻に入って、事件が解決に向かう展開になってようやく、話も面白くなって来ましたが、最後は上述の通り納得はできませんでした。

 まるで、序盤で失点したつまらん展開で、反撃の糸口も掴めず、後半追い付きそうになったけれど、結局追い付くことはなく負けてしまったような試合を見せられたというようなところでしょうか。(何でも野球に結びつけるなあ)


ダブルフェイス(上) 渋谷署8階 特捜本部 (中公文庫)
中央公論新社
2017-07-28
久間十義

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