最近読んだ本(83)――池井戸潤『仇敵』

 本書は書名になっている「仇敵」を含め、8編の短編が集められています。それぞれ独立した話ですが、主人公の東都南銀行庶務行員の恋窪商太郎と若手銀行マン松木啓介を中心にした連作になっていて、一本の長編と言えなくもない構成になっています。

 まず聞き慣れない庶務行員ですが、著者は「庶務行員の仕事は支店の雑務である。(中略)店内案内や様々な雑役をこなすことを仕事としており、昇級も出世も極めて限定された職種といえる」と本文で説明しています。

 主人公の恋窪は、大学卒業後大手都市銀行である東京首都銀行に就職しますが、とある卑劣な策謀のせいで辞職を余儀なくされました。別の銀行に転職できましたが、上の庶務行員の地位に甘んじているという人物です。

 どんな策謀があったのか、連作となっている話の中で徐々に解って行くという形を取っています。そして、松木が恋窪のところに持ち込んでくる仕事上の問題を一つずつ解決して行きながら、かつて自分を陥れた仇敵との戦いに再び足を踏み入れて行くのです。不正を許すことなく、様々な圧力に屈することなく敵に挑んで男=恋窪の物語が本書のテーマです。

 それぞれの話は、テンポ良く進んで行き、小気味良い印象を与えてくれました。ただ、半沢直樹のように最後に10倍返しをするというような大どんでん返しとまでは至らず、若干物足りなさも感じてしまいました。それでも緻密に計算されたストーリーと謎解きのエッセンスも加味され、読んでいて非常に面白い話でした。


仇敵 (実業之日本社文庫)
実業之日本社
2016-04-06
池井戸 潤

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