最近読んだ本(94)――朝井まかて『ちゃんちゃら』

 この本を本屋さんの棚で見かけた時、「朝井まかて」って誰? へんな名前だなあ(失礼)。ペンネームかなあ。それとも本名? なんて思って、本を手に取りました。後で知ったことですが、昨年NHKで放送されていた『ぬけまいる』というドラマの原作が「朝井まかて」さんだったのですね。私が知らなかっただけみたいでした。すみません。

 物語の舞台は、文化3年の江戸。文化3年というと西暦1816年。あと半世紀ほどで明治になるという頃ですね。主人公は江戸千駄木町の庭師「植辰」で修行中の元浮浪児。植辰の親方の辰蔵に拾われて約10年。親も判らず本当の名前も判らない彼は、「ちゃんちゃら可笑しいや」が口癖だったため、皆から「ちゃら」と呼ばれていました。暴れ者で手が付けられなかったちゃらでしたが、酒好きだが腕も気っ風もいい親方辰蔵に仕込まれて、一人前の職人の育ちつつありました。

 植辰にはちゃらの他に池泉(ちせん)、玄林(げんりん)、福助という職人も同居しています。それぞれユニークで個性的な面々に描かれており、物語に厚みを増しています。そして、もうひとり、植辰の男どもの所帯を仕切っているのが、辰蔵の一人娘のお百合。ちゃらとは7歳の頃から兄妹のように育ってきた仲。お百合はきびきびとした女性に描かれています。若い娘さんでありながら、植辰一家の家政を一手に引き受けている存在でした。そして、どうもちゃらに好意を寄せているようなところがあります。ちゃらを囲む男どもは、勝手気ままなことを言い合いながらも、人情味溢れた連中です。植辰一家の雰囲気が実に良いのです。

 物語はそんな心地良さで進められて行きます。一心に作庭に励む植辰一家でしたが、ちょっとひどい厄介事が降りかかるのです。それは、ネタバレになりますので、いつものようにこれ以上は沈黙ですね。ただ、一言だけ言わせてください。最後はちょっと泣けましたです。

 この作品を読み進む内、明るく快活で懸命に生きている江戸の人々を感じられました。そりゃあ、どの時代でもあくどい人もいるものですがね。ともかく、この作品に出てくる多くの人は、そんなに大層なことではなくても、皆自分には何ができて、今何をすればいいか、しっかりと解って生きているように思えました。いつの時代であろうと、世間がどうあろうと、周りの人がどうあろうと、自分嫌いにならず、己の役目を全うすることに懸命に生きるべきですね。時には人を助け、人に助けられたりしながらね。

 歴史上の有名な人物が出て来る歴史小説もいいですが、このような決して歴史に名が残らないであろう庶民の生活を描いた小説も良いです。戦国時代や幕末の動乱を描く歴史小説とは違った読後感を得られました。



ちゃんちゃら (講談社文庫)
講談社
2012-12-14
朝井 まかて

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この記事へのコメント

ぴよ
2019年01月21日 14:14
じーん。。。

読んでみます。
ゲコゲコ
2019年01月22日 00:00
>ぴよ さん
是非。。。

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