最近読んだ本(82)――島田荘司『星籠(せいろ)の海』

 瀬戸内海を舞台に文庫本で上・下2巻に渡る長く壮大な物語。主人公は探偵御手洗潔(みたらいきよし)。ずっと以前に御手洗探偵が出てくる小説を読んだことがあると思うが記憶がはっきりしません。島田氏の作品は当ブログで紹介するのは2作めです。

 話は第1章から第13章、そしてエピローグという構成になっています。第1章で、四国松山沖の瀬戸内海の小島に死体が次々と流れ着くという奇妙な相談を受けた御手洗は、早速現地へ飛び、その事件の鍵は鞆(とも)という広島県福山市にある昔栄えた港町に鍵があることを突き止めます。

 第2章で全く別の話が出て来ます。鞆に住んでいた小坂井茂(こさかいしげる)という青年が、田丸千早(たまるちはや)という高校時代の同級生に誘われ東京に出て行くことになります。ふたりは同棲し、演劇を始め、やがて千早がテレビドラマに出演するまでになります。しかし、ある事故が起き、それが原因でふたりの人生が狂い出します。

 第3章で、再び御手洗が登場。福山での捜査を始めるのですが、そこで新たな殺人事件が起きて……。

 第4章でまた話が変わり、大学助教授(現在では准教授と言いますが、この作品が書かれた頃は助教授だったらしい)の滝沢加奈子の話。ペリーが日本に来た頃に、旧福山藩の阿部正弘が黒船の外圧に対し戦争になった場合を想定して作られたと思われる図面が発見されます。そこには謎の「星籠」の文字が……。

 第5章では、またまた話が変わります。智弘という学校でイジメにあっている少年と、忽那(くつな)という男の話が語られます。

 第6章で、御手洗の捜査の話に戻ります。今回の事件はある新興宗教の教団に関わりがあることを突き止める一方、かつて瀬戸内海を牛耳っていた村上水軍の話も出て来て、物語はスケールの大きな話へと進展して行きます。

 ここまでが上巻で、第7章以降は下巻になります。上巻の各章で別々の物語のようになっていた話が、下巻の各章でひとつひとつ繋がって来ます。独立しているかのような話がどこで繋がってくるのか、少々やきもきしていたのですが、一気にクライマックスに繋がっていく展開に引きずり込まれていきました。

 ただ一つ、今作で気になったのは、御手洗探偵の推理があまりに結論に直結しすぎていた嫌いがあると感じた点です。もうちょっと他の可能性もあったのではないかと思えたことが再三ありました。これはどういったことかと悩むこともなく、即結論に達してしまうというのは違和感がありました。あるいは推理の結論に至った経緯をもう少し作中に入れて欲しかったですね。

 巻末の解説を読むまで知らなかったのですが、この小説は映画化されているそうです。最初から映像化を想定して書かれたともありました。さらに島田氏は福山市の出身とのこと。なるほどと頷けます。瀬戸内海の美しい景色やクライマックスの活劇的な描写はそのまま映像として頭に浮かべることができました。

 私が小説など読む場合、映像として頭に浮かべることができるかどうかが、ひとつの決め手になっています。これは私がテレビや映画といった映像を多く見て育ったからだと思います。頭に映像を浮かべることができれば、本を読んでいてもすんなりとその物語の中に入って行くことができます。その方が読みやすくも感じます。逆に映像が頭に浮かばない時は、読み進むこともたどたどしくなり、ストーリーもなかなか頭に入って来ません。そういった意味で、今作は非常に読みやすかったです。読後感も非常に満足しました。


星籠の海(上) (講談社文庫)
講談社
2016-03-15
島田 荘司

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