最近読んだ本(74)―― 池井戸潤『空飛ぶタイヤ』

 何度か言ったが、私が本を読むのは、通勤電車の中か病院の待合室などに限られている。例えば自宅でじっくりと読むなんてことはほとんど皆無だ。しかし、今作は帰りの電車中で読んでいて、どうしても続きが読みたくて、夕食後、あるいは床につく前になど、時間を作って読んでしまった。

 文庫本で上下巻2冊を、読書速度の遅い私に珍しく10日ほどで読み切ってしまった。面白い本はじっくり時間をかけて長く楽しみたい。あまり早く読んでしまってはもったいないという気持ちを抑えることができなかった。

 中小運送会社赤松運送のトレーラートラックのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃。母親が即死するという事故が起きてしまう。トラックメーカーの財閥系会社ホープ自動車は運送会社の整備不良が起こした事故だと簡単に片付けてしまう。運送会社の社長赤松は、自社に整備不良があったとは考えられないとメーカーに再調査を依頼するが、けんもほろろに追い返される。

 死亡事故を起こした企業ということで取引銀行も融資を断ってくる。主要取引先とも縁を切られる。事故が原因で赤松の子供は学校で辛い思いをさせられ、赤松自身がPTA会長として、モンスターペアレントを相手にすることになる。

 一方ホープ自動車内部でも不穏な動きが。それは組織ぐるみのリコール隠しの疑いがあることを販売部の沢田が知ることになるが、沢田の取った行動は……。リコール隠しの疑いは週刊誌記者に嗅ぎつかれるのだが、いよいよその件が記事になろうとしたとき、お決まりのことのようだが圧力が掛かってくる。しかし……。

 社員、家族のために巨大企業組織に闘いを挑む赤松の前に立ちふさがる障壁。公私ともにまさに四面楚歌の状況に追い込まれる赤松。自分自身も、そして倒産寸前の赤松運送の運命は……。

 プライドばかり高くて責任感や危機感がなく保身に夢中な会社とその管理職の人間。大企業の常識が世間の非常識となっていることを痛烈な批判を圧倒的な筆力で見事に書き上げ、読み手に感動と爽快感を与えてくれた池井戸氏に最敬礼だ。最近読んだ本の中では最高に面白い小説だった。



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