最近読んだ本(67)――雫井脩介『犯人に告ぐ』

 雫井脩介(しずくいしょうすけ)という作家の小説を初めて読んだ。知らない作家だが、本の裏表紙の紹介文を読んで面白そうな話だと手に取った。初版は2004年に単行本で、とあったからちょっと前の作品だ。文庫本で上下巻になる長編だったが、間延びするようなこともなく、最後までワクワクして読み終えた。

 神奈川県警の警視、巻島文彦は幼児誘拐事件の解決のための陣頭指揮をとることになった。しかし誘拐された幼児の家族にちょっとした問題があり、初動捜査に後れを取った警察は犯人を結局逃してしまう。

 それから6年後、川崎市で4件の連続児童殺害事件が起きたが、1件目の事件から1年が経とうとしているのに容疑者すら絞り込めない捜査に行き詰まった神奈川県警は、現役警察官をテレビニュース番組に出演させるという荒技に踏み切った。その担当になったのが6年前の事件の記者会見で大失態をしてしまった巻島だった。

 テレビ画面を通じて犯人に呼びかけるという、作中の言葉を借りれば「劇場型捜査」が幕を開け……。果たして犯人は巻島の呼びかけに応じるのか? 視聴者の反応は? はたまた警察内部の対応は? というのがこの話の大筋である。

 警察自らテレビで公開捜査という実際にはあり得ないようなことを題材にしているにも関わらず、現実でも起こっている悲惨な事件を持って来ており、臨場感あるストーリー展開、快刀乱麻のごとく事件を解決するというような刑事も出て来ず、非常に現実感のある作品だった。各登場人物の描写がさらに現実感を引き出している。さらにテンポ良く歯切れの良い文章が長い話を飽きさせなかった。

 最後に犯人がどういう形で捕まるのかと、とても言いたいのだが、ネタバレになるのでやめておく。ただそこでも非常に現実的だったとだけ付け加えておく。そしてエピローグ的に語られる最後のシーン。実に良かった。見事な終わり方で気持ちのいい読後感にしばらくの時間浸ってしまった。

 ミステリーだとか、探偵小説、推理小説とか言われる作品を数多く読んで来たが、こういうパターンの話に初めて行き当たり、満足できる小説だった。



追記;先ほどちょっと気になってネットで調べて見たら、やはりこの作品は2007年に映画化されていた。知らなかった。主演が豊川悦司さんとあった。私のイメージとは全く違ったので、見なくて良かったかも。私のイメージでは、……あ、これも言わないでおこう。まだ映画を見ていない、本も読んでいない人に余計な印象を与えてはまずいですから。



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