最近読んだ本(62)――宮本輝『三十光年の星たち』

 また文庫本で上下2巻になる長い話。SFっぽい題名だが、そんなものでは全くなく、すごくいい話だった。
大きな事件が起きる訳でもなく、急な展開があるでもなく、謎解きなんていうのもない。ただ淡々と話は進んで行く。それでいて、全くつまらない話なんてこともない。

 京都のとある小路奥の長屋に住む30歳の坪木仁志は、始めた商売が上手く行かず、残ったのは同じ小路にある家にひとり住む佐伯平蔵という老人に借りた80万円の借金。「もぐりの強欲金貸しの佐伯はうなるほどの金を貯め込んでいるはずだ。80万円くらい踏み倒して逃げたとしても、痛くも痒くもなかろう」、と佐伯老人から逃れようかと考えていた坪木であったが、強引に佐伯の運転手役をする羽目になったしまった。行く先は丹後。取り敢えず佐伯の指示通りに運転して行く。こんなことは今回きりだと考えていたが……。佐伯老人の不思議な魅力にどんどん引きずり込まれる坪木。そして、コミカルな坪木の呟きと佐伯老人の力強さと優しさに私は引きずり込まれて行った。

 人が生きて行くということはどういうことか。重いテーマが根底にあるが、そんなことには直接触れることなく、読んでいる私もそんなことを意識せず、読み進んで行く。しかし、その内に「人生とは?」という命題の解答となるヒントを知らされてしまう。そして読後感のなんとも爽やかなことか。

 人に対する優しさと厳しさ。そして強く生きて行くということを教えてくれる本。こんな本には、もう30年~40年前に出会いたかった。年を取ってからではなく若い時に読みたかった。そうすれば、自分の人生ももう少し違ったものになっただろう、と言うのは何もしてこなかった自分への言い訳でしかないかも知れないが、読み終えてみて、こんな本と出会えなかったことが少々悔しかった。

 そして、ツッキッコのスパゲッティを一度食べたくなる本だった。(ツッキッコって何? それはこの本を読んで下さい。あなたもスパゲッティを食べたくなるはずですから)



三十光年の星たち(上) (新潮文庫)
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2013-10-28
宮本 輝

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三十光年の星たち(下) (新潮文庫)
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この記事へのコメント

まめひよ(ぴよ)
2014年12月26日 22:27
ゲコゲコさん、こんばんは。
私も宮本輝さんの作品、大好きです。
この三十光年の星たちは、毎日新聞に連載されていた時、毎日楽しみに読んでいました。
どこだったか、おいしい鍋の作り方が出てくるくだりがあって、いつかそれと同じように作ってみよう、と思いつつ、いまだにできてませんが~(^^;

宮本輝さんの「草原の椅子」、っていう小説もすごーくおススメです♪ 特に50歳代の男性に・・・(^-^)

なぜそう思ったかは、忘れちゃいましたが(^^ゝ

ゲコゲコ
2014年12月27日 10:31
>ぴよ さん
コメントありがとうございます。
「草原の椅子」ですね。今度読んでみます。
でも、私50歳代じゃないので・・・。(^<^)

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