最近読んだ本(55)――東野圭吾『殺人の門』

 いつも会社の行き帰りの電車の中、あるいはプラットホームで電車待ちの時間が私の読書の時間です。家ではほとんど読みません。テレビを見るのに忙しいもので……。(^^ゞ ただ、今日はあと少しで読み終わるというところまででしたので、自宅で日が変わっているのも気付かずに最後まで読んでしまいました。何しろ、実に面白い話でしたから。

 参りました! の一冊でした。東野圭吾氏の力量発揮の一冊でした。読み始めた時は、『白夜行』に似た印象もあったのですが、徐々にそれとは違った感覚に囚われ出しました。いきなり事件が起きる訳でもなく、謎が謎を呼ぶという展開でもなく、はらはらドキドキという場面もなく、非常に地味に話は進んで行きます。

 地味ながら重くのしかかる感覚を感じながら、私は先のページをめくるのをやめることがなかなかできませんでした。通勤電車の中で読んでいて、まだ目的の駅に到着しないでくれ、もうちょっと先まで読ませてくれ、と何度となく心の中で叫びました。

 ガリレオシリーズのようなトリックを暴くのに科学を持ち出した作品も面白い(前の『真夏の方程式』にはちょっとがっかりさせられましたが)ですし、加賀刑事が登場する人情味あふれる話もいいです。ユーモア小説的なものもありますし、色んなパターンで読者を楽しませてくれる東野圭吾。これまで何度となく口にしましたが、すごい作家です。よくぞこれだけ次から次へと読者を引き込む話を作れるものです。

 今回の『殺人の門』にはこれまで以上にどんどん引き込まれてしまいました。してやられました。も一度「参りました」です。私の中では久し振りのクリーンヒット、いや満塁ホームランでした。


 話は、歯医者の息子である主人公田島和幸の少年時代から始まります。東野氏の作品では珍しく主人公は「私」と一人称で語られ話は進みます。「私」は裕福な家庭に生まれながら、両親の離婚から人生に狂いが生じてしまいます。父親がホステスに熱を上げてしまい、その挙げ句にある事件が起きて父親は歯医者をやめなければならなくなります。父親がホステスに多額のお金の貢いだため、裕福だった生活は一転して貧困生活に。「私」は小学生から中学、高校生、そして社会人と成長して行くのですが、その過程でも次々と不幸が「私」の身に起きるのです。

 そこに小学校時代からの友人「倉持修」が絡んで来ます。小学生時代にある事(詳しく述べられないのが辛いです)あった友人。中学、高校と別れてしまいますが、高校時代の夏休みに突然現れる倉持。倉持が現れると何かが起きます。そして地道に働き出した「私」の前に再び現れた倉持。ここから本格的に「私」は倉持に翻弄されて行きます。彼に誘われるまま悪徳商法の片棒を担がされ、そこから逃れる為に努力するのですが、何故かまた倉持の口に乗ってしまう「私」。「私」の人生が倉持に左右され続けます。酷い目に遭う「私」。何度も倉持を殺害しようとする「私」。しかし、そこに至ることはなかなか「私」にはできません。

 単なる腐れ縁では済まない関係が、なんとも言いようのない微妙な「私」と倉持の関係が、これまたリアルに描かれ、読んでいてどんどん「私」に感情移入してしまいました。「私」がなんとももどかしい。やめとけ、もうやめとけ、また倉持に乗せられているだけだ、とページをめくる度に何度か呼びかけましたが、次々と「私」は倉持に引きずられて行くのです。

 ある意味結果が予想できるその時々の展開でしたが、そこは東野圭吾。たとえ読者の予想通りの展開になっても先を読まずにはいられませんでした。倉持に翻弄される「私」こと田島和幸でしたが、詰まるところ東野氏に翻弄される私であったわけですね。

 そして、最後には読者の予想通りの展開だけで終わらないことが、ちゃんと用意されていますから安心して下さい。「あっ!」思わせることがあり、一気に結末へ。実に自然な流れで突然やってくる結末へと持っていく手際もさすが東野圭吾でした。


 もしこの作品を読んでみようと思われた方に、ひとつ注意を付け加えます。長い話ですので最初のほうで読んだことを忘れてしまいがちですが、決して忘れてはなりませんよ。……ネタバレかな? (^。-)-☆


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