最近読んだ本(41)――東野圭吾『ガリレオの苦悩』

 好きなんですよね、東野さんの小説。面白いから、次々に読んでいるんです。

 この度読んだのは、ガリレオこと物理学の大学准教授湯川学が活躍する短編集。湯川准教授も加賀刑事に並ぶ東野作品ではお馴染みのキャラクターです。湯川准教授登場の作品としては、『探偵ガリレオ』、『予知夢』、『容疑者Xの献身』に続いてシリーズ第4弾となるのが、『ガリレオの苦悩』です。こちらには下に上げる5つの短編が納められています。

 東野作品は多くのTVドラマや映画で映像化され、加賀刑事は阿部寛、湯川准教授は福山雅治のイメージが定着してしまって、本を読んでいてもその二人のイメージで読んでしまうのが、いささか邪魔なのですが、私の頭の中でキャラクターがハマりすぎていて、今更どうにもならなくなっています。

 では、『ガリレオの苦悩』に納められた5つの物語についての感想等、簡単に延べさせていただきます。

1.落下る(おちる)

 長編の『容疑者Xの献身』を除いて、短編集のガリレオシリーズでは、ひとつひとつの話の題名に特徴があります。今回もその特徴は受け継がれ、「落下る」と書いて、「おちる」と読ませています。以下の題名も同様なものになっています。

 「落下る」は、あるマンションのベランダから女性が転落死するところから話は始まります。自殺か他殺か、ということですが、単なる自殺なら物語とならない訳で、当然他殺ということで話は展開して行きます。しかし、容疑者にはアリバイがあるし、どうやって犯行を実行したかということで、警察は湯川准教授の知恵拝借ということになるのです。果たして、そのトリックとは……。そして、お決まりの最後のどんでん返し。

2.操縦る(あやつる)

 元大学教授の家にかつての教え子たちが集まってのパーティーが行われました。その最中に離れ家が出火し、離れ家で暮らしていた元教授の子息が焼死体で発見されます。パーティーに遅れて参加した湯川准教授が謎を解くという話。

 実は先の「落下る」とこの「操縦る」は、ドラマ化されたTVシリーズの原作でもあり、そのドラマを見た事もあって、私は結末を知っており、ささと読み流してしまったのですが、今回の短編集にはこれまでの作品で登場しなかった人物が出て来ます。湯川准教授の相手役としては草薙という刑事ひとりだったのですが、今回から内海薫という女性刑事が登場しているのです。

 これはどういうことでしょう? 先の作品をTVドラマ化されたときに、原作には出ていなかった内海刑事役として柴咲コウが演じていましたが、今回のシリーズからその内海刑事が話の中に出ているのです。東野氏はTVドラマに合わせて、内海薫なる女性を持ってきたということでしょうか?

 TVドラマは視聴者相手に原作にはない人物を登場させるような色づけもアリかと思いますが、原作をドラマに合わすとは、、私的にはいささか気に入りませんね。どういう意図があったのか、一度真意を東野氏に尋ねてみたいですが、まあ、私にそんな機会が訪れるとは考えられませんね。

3.密室る(とじる)

 地方の山間部でペンションを営む旧友から、ある事故についての相談を受けた湯川。そして、その真相は……、という話。ただちょっと、他の話よりはキレがなかったかなと感じてしまいました。数多くの作品を執筆している東野氏です。まあ、こんなものもあるってことでしょうね。

4.指標(しめす)

 こちらはなかなか面白かったです。なぜなら「人の思い」が感じられた話だったからです。東野氏には、人の情とか心の奥底にあるものを感じさす話が得意な作家だと私は常々思っているのですが、これもそんな話でした。

 ある老婆の殺害事件が起きます。容疑者を探っていく中で不思議なことをする女子中学生が現れます。水晶の飾りのついた鎖を振り子のように振らせて、様々なことを判断する手がかりにしているのです。そのダウジングに似た手段が、事件の真相に迫る切っ掛けとなるのです。湯川がそこにどう関わってくるのか、あまり詳しいことを話してしまうとネタバレになるのでやめておきます。

5.攪乱す(みだす)

 こちらは他の作品とまた趣が異なり、サスペンスチックな展開で最後まで一気に読むことを余儀なくされました。

 「悪魔の手」と名乗る人物が殺人の予告を警察に送りつけてくるのです。そして、そこには湯川準教授への挑戦とも思える文句も付け加えられていました。果たして、湯川準教授に恨みを持つものの犯行か? そして犯人の狙いは? はたまた連続的に起こる犯行の方法は? 湯川準教授は、「科学を殺人の道具に使う人間は許さない」と、その謎を解明して行くのです。まさに、犯人と湯川準教授の対決。いやあ、面白かったです。

 この後もガリレオシリーズは続くのでしょうか? いや、是非続いて欲しいものです。


ガリレオの苦悩 (文春文庫)
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2011-10-07
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この記事へのコメント

2012年02月05日 01:28
はじめまして、YO-SHIといいます。読書ブログをやっています。

私もこの本を読んだところです。
東野さんの本はガリレオシリーズを中心に読んでいますが、シリーズの短編集の中では、これが一番楽しめました。

内海刑事のことは、私もそう思います。が、あまりに違和感がないので、これはこれで良かったんじゃないかとも思います。
東野さんは、最初から柴咲コウさんをイメージして内海刑事を書いたそうです。
ゲコゲコ
2012年02月06日 00:34
>YO-SHI さん
ようこそおいで下さいましてありがとうございます。

そうですか。最初から柴咲コウさんをねえ・・・。
東野さんの本を読んでいて、時に思うのですが、東野さんは、映像を先に浮かべて文章を書いておられるのではないかと。
文章を読んでいて、頭の中ですんなり映像が浮かんでくることが多いもので・・・。

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  • ガリレオの苦悩

    Excerpt: 「ガリレオ」シリーズの第4弾。長編2作目である「聖女の救済」と同時に2008年に出版された。「落下る(おちる)」「操縦る(あやつる)」「密室る(とじる)」「指標す(しめす)」「攪乱す(みだす)」の5編.. Weblog: 本読みな暮らし racked: 2012-02-05 01:30
  • ◎読書記録◎ 「ガリレオの苦悩」 東野圭吾

    Excerpt: 2010年の思い出 Weblog: The 近況報告!~今度は多摩川のほとりから racked: 2012-02-25 23:36