最近読んだ本(40)――東野圭吾『嘘をもうひとつだけ』

 本の帯に「嘘を隠すには、もっと大きな嘘が必要になる」とあった。誠にその通り。例えば家内に嘘をひとつついてバレそうになったら、さらに嘘を重ねなければならなくなることになりますもの。(--;)

 東野作品でお馴染みの刑事、加賀恭一郎が活躍する5本の短編を集めたもの。軽いタッチで書かれているのに関わらず、他の加賀刑事ものと同様、人間の悲哀を描いた奥の深い作品ばかり。

 短編ということでもあり、それぞれの話に登場する人物の数は少ない。だから、謎解きの話ではあるが、犯人は誰かと考えるまでもなく、おおよその検討は付く。それでも読んでいて、興味の尽きる事はない。加賀刑事のするどい洞察力と的確な捜査に引き込まれて行くのが快い。刑事が犯人を追い詰めて行く過程が話の展開の中心になっているのは、「刑事コロンボ」に似ているようでもあるが、全く違うものであることは読めばすぐ感じるところである。東野氏の作品は長編ものもどんどん引き込まれて行くが、短編も話の組み立てが見事だ。

 簡単に5つの話に触れておく。

 最初は書名にもなっている「嘘をもうひとつだけ」。あるバレエ団の女性が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡。自殺の方向で事件が片付けられそうになったが……、という話。

 次ぎは「冷たい灼熱」。夫が帰宅すると、妻が倒れており、すでに息絶えていた。そしてまだ幼い子供の姿が見えない。強盗か? 誘拐か? しかし真実は……、という話。読者も真実に気付くようちりばめられた伏線が見事。私は気が付きませんでたけど。

 3つ目は「第二の希望」。将来オリンピックの体操選手にと娘に期待を掛ける母親。それに応えようとする娘。ある日、母親が帰宅すると、奥の部屋に男の死体が……、という話。最後の最後にどんでん返し。切なくも悲しい物語、なんてちんけな言葉で表現しては東野氏に失礼か……。

 4つ目は「狂った計算」。夫を交通事故で亡くした女性の元に加賀刑事が尋ねて来る。行方不明の男を捜していると言う。加賀刑事の推理に反する、そして読者も欺かれる結果になるところが爽快だった。あっ! これは言ってはいかんことだったか……。(^^ゞ

 そして最後の「友の助言」は、ちょっと他の話とは異質。殺人事件は起きない。ただ加賀刑事の友人が車で事故を起こしてしまう。しかし、その事故に隠された真実は……。

 先にも言ったようにどの作品も哀しみが満ちている。それなのに加賀刑事の鮮やかなお手並みが印象に残ってしまうという不思議な5作品だった。


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