高校2年の夏休みの思い出(2)

 あの時以来、私はPLの花火見物には行っていない。懲り懲りという感じだ。だから、去年の夏、娘がPLの花火を見に行くと行った時には、間髪入れず「やめときなさい」と言ってしまった。まあ、うちの娘、親の言うことを聞く子には育ってませんがね。(^^ゞ
 ともかく、お話の続きをしなければ・・・・・・。
 (この話は、こちらからの続きです)


 乗った時にはかなりの乗客だった電車は、途中の駅で客はどんどん降りてしまい、終点の難波に近付く頃には、立っている人はいないくらいだった。当然と言えば当然で、遅くまで繁華街で遊んで帰る乗客の多い下り電車ならまだしも、私とN井くんの乗っている電車は上り。午後11時過ぎに終点まで乗って行く人はそんなにいない。

 電車が難波に着いてドアが開くと同時に飛び降りてホームを走った。待ち合わせ場所の改札口まで行ってみたが、一緒に山陰方面へ海水浴に行く約束をした友達、M野くんとO橋くんのふたりの姿は、予想通り見えなかった。

 やっぱり先に行ってしまったのか・・・・・・。当たり前だの何とかだよな。約束の時刻を1時間半も過ぎてしまったもんなあ、と肩を落として改札を出た。家に帰る切符を買って、すぐに戻らなければならない。もうほとんど終電に近い時間であった。

 振り向くと、私の後に続いて改札を通ったN井くんの顔をみると、「これからどうするの?」と無言で聞いていた。
「こんな遅うまで付き合わせてしもたな。すまん。もう帰るわ。明日、予約してある民宿に電話してみるわ」とN井くんにそう言って、券売機のほうへ歩き掛けた。

 その時になって初めて、券売機の並びの端っこに、ふたりの若い男がいるのに気が付いた。M野くんとO橋くんだった。
「おい、遅いやんかぁ。何してたんや?」と、M野くん。不思議と怒っている様子ではなかった。私があまりに遅いものだから、怒る気もなくしてしまったのかも知れない。

 O橋くんもニコニコと笑いながら、
「もう、早(は)よう行かな、地下鉄も終電になってしまうで。早(は)よ、早(は)よ」と、地下鉄へ通じる階段のほうへ私を急かせた。
「ごめん。こんなに遅うなるとは思わんかってん。ホンマにごめんやで」
 頭を下げる私に、O橋くんは、
「もうええから。さ、急ごう!」と、私の手を引っ張った。

「・・・・・・ってどうすんねん。もう山陰へ行く電車はないやろ?」
O橋くんに手を引かれながら私が聞くと、M野くんが代わりに答えた。
「今夜は、大阪駅で一晩過ごすことにしよう。明日の朝一番の電車で行くんや」

 その言葉を聞いて、それまで様子をうかがっていたN井くんが、
「大阪駅で一晩過ごすんか? やっぱり僕もそこまで行くわ。今さら家に帰るのも、なんかしんどい気がするし。あんたらと一緒にいるのもおもしろそうやし」と、この場合第三者のはずなのに、皆を先導するように地下鉄に向かい出した。

「おいおい、N井。お前も海水浴に着いてくるんか?」と、私はちょっと冷たい感じで聞いてしまった。そんな言い方するよりも、「一緒に来いよ」と言うべきだった。民宿の予約人数なんてどうにでもなったような気がする。客がひとり増えるのだから、民宿のおばさんも喜んだかも知れない。

 N井くんは、私の冷たい言葉を気にも止めず、
「いや、僕は行かへん。大阪駅までや。第一、そんなにお金持ってへんし」と、ぼそっと言って先を歩いて行った。

 なぜN井くんが私に付いて来たのか、事情のよく解らないはずのM野くんとO橋くん。「まあ。何でもええわ」と思っていたのか、詮索することもなく黙っていた。

 その時からもう30数年経った。あの時の私の心境を今でも思い出すことができる。あの時の私が感じた思いは、それまでには感じたことがないものだった。妙な違和感めいたものを持って3人の後ろを付いて行っていた。

 1時間半も待たされれば、普通はかなり怒るであろう。そして、もう来ないと判断して放って行ってしまっただろう。それなのに、文句らしい文句を言わなかったM野くんとO橋くん。

 ふたりとは、高校2年生になって同じクラスになったところで、まだ知り合って3ヶ月ほどしか経っていなかったのだ。私自身、ふたりからそんなに信頼もされていなかったはずだ。それなのに、黙って待っていてくれた。

 さらに、大阪駅で一晩過ごす私たちに付き合うと言い出したN井くんだ。私なら、「じゃあここで」と別れて、さっさと家に帰っていただろう。そんなことをしなかったN井くんの心境も理解し難かった。

 大阪駅までの地下鉄の中、空いた席にも座らずに、つり革にぶら下がって立っていた。正面の車窓を見ていた。地下鉄である。外は真っ暗。見えるのは、窓ガラスに映った自分の顔。その顔は、他の3人に妙に納得できない気分と、ただただ申し訳ないことをしたなあという気持ちが入り交じった情けない顔であった。

                  (さらに、つづく・・・)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ぴよ
2006年08月04日 22:34
ますますもって続きが読みたくなりますねぇ。
いいご友人を持たれて ゲコゲコさんはシアワセですね。
今頃はみんな いいおとうさんになってるんでしょうね。
きっとみんな、このときのことは 楽しい思い出の1ページになってるんじゃないでしょうか?
ゲコゲコ
2006年08月04日 23:23
実は、今非常に困ったことになっています。
この話のオチを考えていなかったことに気が付いたのです。
どうやって、ぴよさんに笑っていただこうか、悩んでいます。
ぴよ
2006年08月04日 23:41
別にオチなんて要りませんやん(笑)
高2の時のゲコゲコさんの気持ちが知りたーーい!

その時のご友人とは 今でもお付き合いがあるのですか?
久々の思い出話、ワクワクしまっさ~♪
ゲコゲコ
2006年08月05日 11:57
いやいや、オチがなければ、ぴよさんに突っ込んでもらえませんやん。

今でも付き合いがあるのかとのご質問ですが、この話のあとのほうで付け加えるとします。

この記事へのトラックバック