高校2年の夏休みの思い出 (1)

 高校2年の夏休みの8月1日。クラブ活動で学校に出ていた私は、帰る間際に友達にPLの花火に行かないかと誘われた。聞けば、女子生徒も入れて8人で行くと言う。

 しかし、私は、翌日から山陰の方へ2泊3日で海水浴に行く約束を別の友達としていた。その日の夜行列車で行く予定だった。夜行列車にしたのは、朝早く向こうについて、存分に遊ぶ時間が欲しかったからであった。大阪駅を午後11時過ぎに出る夜行列車に乗るために、南海難波駅の改札口で午後10時というのが待ち合わせの約束だった。

 急な花火見物の誘いだから、断ってもよかったのだが、女の子も行くという一言で、口から出た言葉は、
「ああ、いいよ。行くよ」だった。

 実は私はPLの花火大会に行くのは、その時が初めてだった。だから、有名な花火大会ではあるが、どれだけの見物人が集まるかなんて、全く予想していなかった。花火大会は、9時頃終了。電車を乗り継いで、なんとか約束の時間には間に合うだろう、ちょっとくらい遅れても待っていてくれるだろう、との算段でみんなについて行った。女の子とぺちゃくちゃ話しながらついて行った。

 花火には感動した。綺麗というより、ものすごい花火だった。迫力に圧倒された。終わった後も、その余韻が残る道を駅まで急ぎ足で帰った。

 ――いや、急いで帰るはずだった。全然急げなかったのである。打ち上げられた花火も相当な数だっただろうが、駅へ向かう人の数もすごかった。道から溢れんばかりの人、人、人。急ぎ足で歩くなんてことはとても出来ない。遅々として駅に近付かなかった。

 駅に着いた時、すでに午後10時数分前だった。15分くらいの距離のところを、1時間近くかかっていた。現在なら、携帯電話で連絡も出来ただろうが、1970年代のことである。難波の駅で待っている友達に連絡するすべがなかった。難波まで行くには、電車を乗り継いで1時間は優にかかる。そんなに遅れては、約束した友達も待ってくれないだろう。第一、乗らなければならない夜行列車に乗り遅れてしまう。

 兎も角、難波まで行ってみるしかない、と切符を買ってぎゅうぎゅう詰めの電車に乗れたのが10時半過ぎ。南海高野線に乗り換えの駅に着いて、電車から飛び降りるようにして階段へと向かった。一緒に花火を見に行った連中とは、そこで離ればなれになってしまった。そんなもの構っていられない、というその時の心境だった。早く難波まで行かなくては。その事だけが頭にあった。もう昼かと思うほど辺りを明るく照らした大輪の花も、地響きするような大音量も頭には残っていなかった。

 ホームに電車が入って来たようだったので、大急ぎで階段を駆け下りて、電車に飛び乗った。

 すると、ホームの反対側に入って来た電車に乗ろうとしている、一緒に花火見物に行った中のひとり、N井くんの姿が目に入った。

「なんだあいつ。どこへ行くんだ。なんで、こっちに乗らないんだろう・・・・・・」と、思いかけて、はっと気が付いた。

 どこへ行く気なのは、自分の方だった。私は反対方向への電車に飛び乗っていたのだ。そのまま乗っていけば、難波で待っている友達のこともさることながら、時間的に家に帰るのも難しくなっていただろう。

 電車のドアが閉まろうとしていた。私は、前の人を押し分けてホームに降りた。背中は汗でびっしょり。それは暑さから来るものだけではなかったはずだ。

 先に難波行きの電車に乗っていたN井くんは、後ろから背中を押されて迷惑そうに振り返った。そこには、汗びっしょりになって飛び乗って来た私がいた。

「ど、どないしたん。急に姿が見えんようになったと思うたら、後ろからえらい形相で押し乗って来たりして・・・・・・」

 そういうN井くんに、私は海水浴に行く約束をしていること。もうその約束の相手は待ってくれていないかも知れないことを話した。

「そらあ、アカンやろ。もう待ってへんで。先行ったと思うで。まあ、明日の朝一番の特急で行けばええやん。僕がええ列車探したるわ」
 N井くんはそう言って、何やら考え込んでいた。

 N井くんは、鉄道マニアであった。日頃から時刻表を座右の書としているほどであった。と言っても、今で言う「おたく」とは、ちょっと違っていたと思う。そんな閉鎖的で近寄りがたい(こういう言い方は偏見かな?)人間ではなかった。実は、私はN井くんとは一番の仲良しだと言えるほどで、この時だけでなく、高校を出てからもN井くんとの付き合いは続くことになるのだが、その話はまた別の機会にするとして、ともかく、この時は待ち合わせている友達のことが心配になっていた。

 N井くんは、
「うーん、今日は時刻表を持ってへんから、ようわからんわ。けど丁度ええ列車があったはずやから、大阪駅まで行けば判るわ。僕もついて行ったるわ」と、ちょっと耳を疑うようなことを言った。

 「大阪駅まで・・・・・・」って、どういうこと? 約束した友達が先に行ってしまっても、この時間から大阪駅まで行くっていうの? 家に帰らんでもええの? あんたも、海水浴に着いて来るって言うの? しかし、あんたの分の宿は予約してないで・・・・・・。私は、N井くんの真意を測りかねていた。

 まあ、勝手にすればいい。それよりも、問題は難波で待ちぼうけを食らわされている友達のほうだ。その時乗っている電車は急行だったが、その時の私には全然速くないように思えていた。腕にはめた時計ばかり気にしていた。もはや時刻は11時を過ぎ、乗るはずだった夜行列車の発車時刻を過ぎても、まだ難波には着いていなかったのである。

 果たして、約束した友達に会えることが出来るのだろうか・・・・・・。

 この続きは、また後日にします。実は、物語を書くというのは、こんなに長くなるのものだとは思わなかったのです。今日一日で、すべてが語り終えると、安易に考えていました。言いたかったことを極力抑えたのですが、この長さです。あまりに長いと読むほうも疲れますよね。ここまで読んでくださった方、すみませんねえ。そしてありがとうございます。
 ということで、続きは近日中に必ずアップしますので、どうかご了承下さい。

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この記事へのコメント

2006年08月02日 18:31
続きを楽しみにしてます(^o^)丿
やっちー
2006年08月02日 21:42
青春やな~
ワテも楽しみにしてるで~(^_-)-☆
ゲコゲコ
2006年08月02日 22:48
ありがとうございます。
でも、すみませんねえ。たいして面白くもない話で・・・。
あまり楽しみにせんとってくださいよ。
プレッシャーでんがな。

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